レトロとモダンの融合。ヨーヨーの歴史を知れる(?)一品
最初に総評を言うと、「強化したプラヨー」といった感じだ。リムがアルミなのでステンレスよりかはスリープの伸びは控えめだがその分軽くて扱いやすく、ほぼプラヨーの感覚で扱える。リムの表面もポリカボディと同じ触感で違和感がなく、リムもストレート形状だが縁が丸めてあるのでキャッチした時に手を痛めにくい。ボディとリムの段差も殆ど無く、非常に丁寧な仕上がりに好感が持てる。それこそ好みが合うならバインド初心者に薦めてもいいくらい素直なヨーヨーに仕上がっている。ただ、本音を言えば性能は少々控えめである。同じiYoYoのアイスバーグもポリカボディに金属リムヨーヨーだが、むこうはステンレスリムでクセこそ強めだが、圧倒的にパワーがあるし、動かしにくいわけでもない。勿論スピンマスターXが優れる点もあるが、競技、性能思考の人ならアイスバーグを選ぶ人が多いかもしれない。性能と値段の面で見ても、クラウンやミラージュ、シャッターなどの方が少々だが値段を抑えられるし、その上で性能もスピンマスターXよりいい。流石にこれはボディ材質自体が違うので少々論点がズレるかもしれないが・・・だが、一番重要なのは性能じゃない。このスピンマスターXはかつて隆盛を極めたヨーヨージャムの名作、スピンマスター2の「リメイク」なのだ。つまり、このヨーヨーで一番重要なのは「かつての再現度」だ。iYoYoのオーナーのDave氏はかつてヨーヨージャムに所属し、このスピンマスター2を使っていた。そしてヨーヨージャムCEOデール氏とシグネチャー元のブレント氏にわざわざ正式にライセンスを受けてこのヨーヨーを発売した。iYoYoはドイツらしく(?)品質には非常にこだわりがあり、実際に購入したアイスバーグやサンライズも素晴らしく丁寧かつ実直な仕上がりで信頼できるメーカーだ。現代でも通じるようにローエッジにしたり幅を43mmまで広げたりと設計変更があるが、ボディ形状、リムの材質、フィーリング、果てはカラーリングに至るまで当時の面影を出来る限り残しながら生み出された結果が、最初に述べた性能なのだ。これにケチをつけるのはナンセンスだろう。むしろオリジナルのフィーリングを残しながらここまで現代に通用する性能に仕上げたことを称賛するべきだと勝手ながら思う。自分は第一次ブームの復帰勢でヨーヨージャムもブレント氏もスピンマスター2も全く知らなかった。後にジャムのヨーヨーを調べて、現代目線からすればお世辞にも性能がいいとは言えないヨーヨーで皆大会を戦っていたと知った。スピンマスター2だって振ったことは無いが、ボディ形状やレスポンスなどを見るだけでも下手をすれば今の一部のバインドプラヨーの方が使いやすいし性能がいいかもしれない。そんなヨーヨーを使いながらブレント氏は現代にも通用するフリースタイルをやってのけ、全米大会を制した。そうした昔の歴史を、このスピンマスターXを通して知ることができた。上記にあるスピンマスターのブログにあるように、当時を知っている人が懐かしんで手に取るのも勿論だが、自分の様なちょっと昔を知らない人にこそこのヨーヨーを手に取ってみてほしい。「こんなヨーヨーで世界を戦っている時代があった」「こんな選手たちがこんなフリーをしていた」「こんなメーカーがあった」スピンマスターXを通してそうした歴史に触れてみるのも、ヨーヨーの楽しみの一つじゃないだろうか。