8年目になっても全く色褪せない名機。『A7068のヨーヨーとは何か』を体現したヨーヨー
去年の中頃に買えたのにずっと書けていなかったのでようやくレビュー。 自分が復帰した2020年、既に謙信は過去の物で、後日発売したバイメタル版の謙信極を購入して納得してはいたのだが、2023年に(恐らく一度限りの)再販ということで遂に手にすることができた。発売年は2016年。今から8年前。材質はA7068。現在主流のA6061(ジュラルミン)、A7075(超々ジュラルミン)よりも更に硬度に優れるアルミ合金をヨーヨーで初めて使った記念すべき一作だ。当時の数少ないレビューですら「モノメタル最強の一角」と言われたヨーヨー。してその実態は8年という月日を全く感じさせない、むしろ今なお燦然と輝く性能を備えたモノメタルである。 スペックはモノメタルでは極普通。強いて言えば軽量でフルサイズよりかは僅かに小さめではあるが、現代でもこの程度なら全然ありえるスペック。形状も戦国の中では至極真っ当で、二段のステップストレートに、サイドフェイスも中心に上杉家の家紋が入った、名前負けしないながらもシンプルにまとまったデザイン。購入したカラーはシルバー。陶器の様な色合いと触り心地が一際特別感を放っていて、見ているだけでも満足感が素晴らしい。いざ振ると、スペックらしく軽めで少し小ぶりなサイズ故に動かしやすく、フィーリングも軽め。リムの角も丸く、カラーリング(ブラストも?)もあってか尖った部分が無い。使っていて終始ストレス無く使っていける。ただこの軽さだと、大抵のヨーヨーはスリープの伸びが足らず、今一歩足りなくなる機種が多い。しかし謙信はそういった事態にはならず、むしろこの軽さでスリープの伸びはここ最近のモノメタルにも比肩するだけの物を持っている。流石にバイメタル並、とまではいかないがしっかり使えばモノメタルでも上位の伸びを見せてくれる。それこそ65~67g台のモノメタルにも負けないだけの伸びがある。最近の機種でフィーリングやスペックが一番近いのはヨーヨーファクトリーのアビスだろうか。アビスは現代技術の粋で軽さを維持しつつ回転力・伸びを維持しているが、謙信は材質の強みを前面に出してシンプルイズベストに「要らない重量を極限まで削ぎ、必要な個所に乗せる」ことで回転力・伸びを出している・・・筈。何にしろ現代ヨーヨーとタメを張れるだけの性能を持っている事実には変わらない。裏を返すと、当時はA7068を使うことでようやくこれだけの性能を出せた、とも言えるが。現代ではA7068のヨーヨーもそれほど珍しくは無い。値段もピンキリだが謙信よりも安いA7068のヨーヨーも勿論存在する。性能も勿論ピンキリだ。更に言えば人の好みにも依るから一概に謙信が使いやすいとは言えないだろう。それでも発売から8年経った今でも、謙信がモノメタルヨーヨーの選択肢にある、という事実が既に凄いのだ。日夜新商品が発売されるヨーヨー業界で、8年前といえば相当な技術差がある。あのロングセラーであるヨーヨーファクトリーのシャッター、C3ヨーヨーデザインのクラウンでさえも2013年発売、マイナーチェンジをしながら今年で11年目といえば8年がいかに長いかが分る筈。8年前の機種をポンと買って、そのまま現代のフリースタイルに耐えうるモノメタルがどれだけあるか。どのメーカーも、8年前の機種を発売するところはまず無い。なぜならヨーヨーの世界の技術進歩は凄まじく、またそれ以上に新商品が次々と出てくるからだ。余程の性能かネームバリューが無い限り、再販しても売れはしない。その点、謙信は今なお最前線にいる。むしろ発売当時よりも知名度は上がり、その性能を多くの人に披露している。自分がオススメのモノメタル、特にフリースタイルに使うようなモノメタルで挙げるなら、間違いなく謙信は選択肢に入るだろう。人の好みにも依るが、相性が合えばこれほど心強い機種は無い。ヨーヨーが増えていく中で、スペック・形状・材質の違いでどうヨーヨーが変わるか。それが知りたい人が出てくるだろうし、この形状・このサイズ・この材質がいいと特定する人も出てくるだろう。漠然と「A7068のヨーヨーで何かいい機種は無いか?」そんな質問も勿論あるだろう。そしたら、自分は間違いなくこの謙信を推す。勿論値段や特徴云々もあるが、第一に挙がるのは謙信。それは間違いない。それだけの性能・信頼がある。これを書いている現在、発売カラーは全て揃っているがこれがもし売切れたら今度の再販は分からない。迷っているなら是非手に取ってその8年前の性能を体感して欲しい。 追記:バイメタルの謙信極との比較だが、わりかし別物。極の方はモノメタルに比べて速度が出しやすく(加速性が良い)、安定性もやや上(個人差有り)だが、バイメタル特有の癖やステンレスリムの重量配分によるフィーリングの違いがあり、一概にバイメタル版が上とは言えない。なによりリムが鋭く、結構痛いしフィーリングが硬いので安全性は大きく劣る。更に言うとスリープの伸びはモノメタルと同等~微増くらいで、劇的にスリープが伸びているとは言い切れない。その点、操作性の良さや扱い易さ、全体バランスの良さはモノメタル版に軍配が挙がる。個人的にはモノメタル版の方が好み。